スバル アルシオーネ AX9|4WDアヴァンギャルド

1985年、スバルが世に送り出した一台のスペシャリティカー。
その名は、スバル アルシオーネ。
低く鋭いウェッジシェイプ、ガラス面を大胆に使ったキャビン、そして水平対向6気筒とフルタイム4WD。アルシオーネは、当時の国産車とは明らかに異なる発想で造られた、未来志向のクーペでした。
今回は、1985年式 スバル アルシオーネ AX9・VXの個性的な造形とメカニズムを、イラストとともに振り返ります。

4WD技術を、美しいクーペの姿に
アルシオーネ AX9の第一印象を決めるのは、空気を切り裂くような低いボディです。
大きく傾斜したフロントウインドウと直線的なボディラインは、1980年代らしい未来感に満ちています。白い車体に黒いガラスエリアを組み合わせた姿は、まるで一枚の面から削り出したようです。
グレードはVX。右ハンドル仕様で、フルタイム4WDと水平対向6気筒エンジンを搭載した、アルシオーネを代表する上級モデルでした。

空力を意識した鋭いウェッジシェイプ
アルシオーネの外観は、低いノーズから後方へ向かって流れるウェッジシェイプが特徴です。
格納式のリトラクタブルヘッドライトを採用することで、ライトを閉じた状態ではボンネットから先端までが滑らかにつながります。真正面から見ると、その低さと幅広さがいっそう強調されます。
キャビンはガラス面が大きく、細いピラーと傾斜したウインドウによって開放感を演出。くさび形のシルエットに、ガラスで包まれたような軽快な上屋を組み合わせた、独創的なスタイルです。

横一文字のテールが描く、端正なリア
後ろ姿にも、アルシオーネならではの未来的な造形が表れています。
左右いっぱいに広がる横一文字のテールランプは、車体をワイドに見せる重要なデザイン。中央には大きく「SUBARU」の文字が入り、リアビューの象徴となっています。
トランクリッドにはVX 4WDとALCYONEのエンブレムを配置。直線を基調としたすっきりした面構成と、細部まで作り込まれたロゴやランプ類が、さりげない上質さを生み出しています。
角張った形でありながら重たく見えず、平たくシャープにまとめられたリアスタイルです。

ドライバーを包み込む未来感あるコクピット
室内に目を移すと、外観以上に個性的な世界が広がります。
運転席を中心に各種スイッチを集めたインストルメントパネルは、ドライバーを包み込むようなレイアウト。ステアリング周辺やセンター部分には多数の操作系が並び、航空機のコクピットを思わせます。
視認性を重視した横長のメーターパネルには、速度計や回転計、燃料計、水温計などを整然と配置。機械的でありながら情報がひと目で把握できる、合理的な設計です。
一方で、明るい色調のシートや広がりのあるガラスエリアによって、室内には開放感も確保されています。スポーティーさと快適性を両立した、アルシオーネ独自の空間です。

水平対向6気筒と4WDが生む安定感
アルシオーネVXの大きな魅力が、スバルらしい独自のメカニズムです。
エンジンルームには水平対向6気筒エンジンを搭載。左右にシリンダーを寝かせた構造によって重心を低く抑え、滑らかな回転感と安定した走りを目指しました。
さらにフルタイム4WDを組み合わせ、4輪でしっかりと路面を捉える走行性能を実現。スポーツクーペらしい低い姿勢と、スバルが培ってきた4WD技術が融合しています。
華やかな外観だけではなく、中身にも確かな個性が込められているところが、アルシオーネの面白さです。

未来への期待があふれていた1985年
アルシオーネが登場した1985年、日本では科学技術や新しい文化への期待が高まっていました。
つくば科学万博が開催され、人々はロボットやコンピューター、未来の暮らしに胸を躍らせました。家庭用ゲーム機が人気を集め、カセットテープや携帯音楽プレーヤーで好きな音楽を持ち歩く文化も定着していきます。
街にはネオンや大きな広告看板が増え、ファッションでは肩を強調したジャケットや鮮やかな色使いが流行。新幹線網の拡大など、交通の面でも日本のスピード感が増していた時代です。
そんな空気の中で登場したアルシオーネは、まさに未来を形にしたクルマのように映りました。

自由とエネルギーに満ちた80年代のアメリカ
1985年のアメリカでは、ネオンに彩られたダウンタウンや24時間営業のダイナーなど、エネルギッシュな都市文化が広がっていました。
大型ラジカセやカセットテープで音楽を楽しみ、ローラースケートやハイカットスニーカーをファッションに取り入れる若者たち。デニムジャケットや鮮やかな色の服装も、80年代らしさを象徴しています。
ゲームセンターや映画、音楽などの娯楽文化も勢いを増し、広大なハイウェイは自由な移動の象徴でした。
海外市場も意識して造られたアルシオーネの大胆なスタイルは、こうしたアメリカの景色にもよく似合うものだったと感じられます。
まとめ
1985年式 スバル アルシオーネ AX9は、単なるスポーツクーペではありません。
低く鋭いウェッジシェイプ、横一文字のテールランプ、個性的なコクピット、水平対向6気筒、そしてフルタイム4WD。デザインと技術の両面から、スバルが考える未来を示した一台でした。
登場から長い年月が過ぎた現在でも、その姿には古さよりも独創性が強く感じられます。流行に合わせるのではなく、独自の思想を貫いて生まれたからこそ、アルシオーネは今なお忘れがたい存在なのでしょう。

