日産 ミストラル R20|欧州生まれの頼れる本格SUV

1990年代前半、日本でもRVやクロカン4WDが一気に身近な存在になっていった時代。そんな中、日産のラインナップに加わった少し異色のSUVが「ミストラル」です。
1994年に日本へ登場したミストラルは、ヨーロッパで生産されたSUVを日本市場へ導入したモデル。角張ったボディに背面スペアタイヤ、ルーフラックやサイドステップなど、見るからに「道具として使いたくなる」スタイルを備えていました。
今回の造形浪漫帖では、1994年式 日産 ミストラル・R20を、外観から内装、エンジン、そして1994年当時の時代背景まで振り返っていきます。
欧州からやってきた、日産の個性派SUV

今回紹介するのは、1994年式の日産 ミストラル。型式はR20、グレードはタイプSです。
日本車でありながら、その成り立ちにはヨーロッパの空気が色濃く漂っています。背が高く、四角く、飾りすぎないボディ。大型のバンパーや補助灯、ルーフラック、背面スペアタイヤなど、当時のクロスカントリー4WDらしい装備がよく似合います。
都会で目立つためというより、荷物を積んで遠くへ出かけるためのクルマ。そんな「実用品としての格好よさ」が、ミストラル最大の魅力といえるでしょう。
四角く、道具っぽく。それがミストラルらしさ

ミストラルの外観は、とにかく分かりやすいほどスクエアです。
高く直立したキャビン、大きなガラスエリア、張り出したフェンダー、そしてボディ後端に背負ったスペアタイヤ。丸みを強調したSUVが増えていく以前の、機能をそのまま形にしたようなデザインが特徴です。
フロントには存在感のあるバンパーと補助灯を装備。サイドステップは乗り降りのしやすさを助けるだけでなく、横から眺めたときの力強さも演出しています。
派手ではありませんが、眺めれば眺めるほど「ちゃんと使えるクルマ」という説得力があります。アウトドアの風景だけでなく、意外にも街中の景色にもすっと馴染むのが面白いところです。
飾らない室内に感じる、1990年代の実用美

インテリアも外観と同じく、実用性を第一に考えたシンプルな仕立てです。
右ハンドルの運転席を中心に、メーターやスイッチ類は必要なものを分かりやすく配置。水平基調のダッシュボードと大きなスイッチ類には、1990年代らしい懐かしさがあります。
メーターパネルも華美な演出はなく、速度やエンジン回転数、燃料残量などをひと目で確認できる素直な構成。センターまわりにもオーディオや空調などが整然と並び、迷わず操作できそうな安心感があります。
豪華さで魅せるSUVではなく、長距離移動やアウトドアで気兼ねなく使えることを大切にした室内です。
見えない部分まで、頼もしさを感じさせる

ボンネットを開けても、ミストラルらしい「道具感」は変わりません。
エンジンルームは機械がぎっしり詰め込まれたというより、それぞれの部品が比較的分かりやすく配置された実用的な印象。現代のSUVにはない、機械そのものが見えるような雰囲気があります。
華やかな性能アピールよりも、旅や日常をしっかり支えてくれそうな頼もしさ。それこそが、この時代の本格SUVに求められた大切な価値でした。
大柄なボディや足元の力強さだけではなく、こうした中身からもミストラルのタフなキャラクターが伝わってきます。
品のよさと冒険心が同居する、不思議な魅力

ミストラルには、本格SUVらしい無骨さがありながら、どこかヨーロッパ車のような落ち着いた雰囲気があります。
石畳の街並みに置いても違和感がなく、一方で山や川を背景にすると一気にアウトドアギアらしい表情を見せる。その振れ幅の広さが、このクルマならではの個性です。
ルーフラックには荷物を積み、サイドステップを使って乗り込み、背面にはスペアタイヤ。そして前方には頼もしいバンパーと補助灯。
ひとつひとつの装備が飾りではなく、「使うためのもの」に見えるところが実に魅力的です。
現在のSUVが快適性や都会的なデザインを重視するのに対し、ミストラルには「次の休日はどこへ行こうか」と思わせてくれる、冒険道具としての雰囲気があります。
1994年、日本は平成の新しい日常へ

ミストラルが登場した1994年。
街ではポケットベルが使われ、音楽はCDやカセットで楽しむのが当たり前。ゲームセンターには大型筐体が並び、コンビニエンスストアも日常の風景としてますます身近になっていました。
平成が始まって数年。昭和の面影を残しながらも、新しい文化やデジタル機器が少しずつ生活に入り込んでいった時代です。
テレビ、音楽、ゲーム、ファッション。今振り返ると、どれも1990年代らしい独特の空気を持っています。
そんな時代の日本に、ヨーロッパ生まれのミストラルがやってきました。国産SUVとは少し違う雰囲気を持ったその姿は、当時でもかなり新鮮に映ったことでしょう。
アメリカの広い景色にも似合いそうな一台

果てしなく続く直線道路、砂漠のモーテル、ロードサイドのダイナー、そして地図を広げながら進むロングドライブ。
そんなアメリカの風景を眺めていると、ミストラルのようなSUVで旅をしたくなってきます。
もちろんミストラル自身はヨーロッパにルーツを持つモデルですが、背の高いボディと背面スペアタイヤを備えた姿には、広大な大陸を走るクルマにも通じる雰囲気があります。
舗装された街だけでなく、その先へ。
目的地そのものよりも、そこへ向かう時間まで楽しみたくなる。ミストラルは、そんな旅の気分を感じさせてくれるSUVです。
まとめ|今見るからこそ魅力的な、四角い相棒
1994年式 日産 ミストラル R20。
現代のSUVと比べれば、デザインも装備もずっと素朴です。しかし、その素朴さこそが今では大きな魅力になっています。
四角いボディ、背面スペアタイヤ、サイドステップ、ルーフラック。必要なものがそのまま形になったようなスタイルには、流行とは違う普遍的な格好よさがあります。
ヨーロッパ生まれの品のよさと、本格SUVらしい頼もしさ。
街にも似合い、山にも似合い、海辺にも似合う。
ミストラルは、「クルマを道具として楽しむ」という感覚を、今あらためて思い出させてくれる一台なのかもしれません。

