ホンダ シティ カブリオレ(1984–1986)|ピニンファリーナの協力で生まれた、12色の4座オープン

1984年7月4日、ホンダは初代シティに、本格的なソフトトップとオーバーヘッドバーを備えた「シティ・カブリオレ」を追加すると発表しました。発売日は同年8月1日。当時のホンダは、このクルマを「国産唯一のファッショナブルなフルオープンカー」と紹介しています。
小さく背の高いシティの個性的なボディに、4人で乗れるオープン空間を組み合わせた一台。ボディの基本構造とソフトトップのスタイリング、レイアウトには、イタリアの名門カロッツェリア、ピニンファリーナが協力しました。
専用色を含む12色のボディカラー、選べる内装、手軽に開閉できる幌。シティ カブリオレは、速さを競うためではなく、毎日の道を少し楽しくするために生まれたオープンカーでした。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 車名 | ホンダ シティ カブリオレ |
| 型式 | E-FA |
| 発売 | 1984年8月1日 |
| 販売時期 | 1984年~1986年 |
| ボディ形式 | 2ドア・4座フルオープン |
| エンジン | ER型 1,231cc 直列4気筒OHC |
| トランスミッション | 5速MT/ホンダマチック |
| デザイン・設計協力 | ピニンファリーナ |
| ボディカラー | 専用色を含む全12色 |
ホンダ シティ カブリオレ――脱いで、パラダイス。

初代シティの特徴だった、背の高いコンパクトなボディ。その小さな車体から屋根を外し、ワイドなフェンダーと黒いバンパー、独立した丸型ヘッドライトを組み合わせたのが、シティ カブリオレです。
ピニンファリーナは、ボディの基本構造に加え、ソフトトップのスタイリングやレイアウトにも協力しました。日本の小さなシティに、イタリアのオープンカー文化が溶け込んだ、少し不思議で特別な一台です。
小さなボディで、しっかりオープン。

シティ カブリオレは、2人乗りの小さなロードスターではありません。前席2座と後席を備えた、4人乗りのフルオープンモデルです。
車体中央には、太く存在感のあるオーバーヘッドバーを配置。屋根を開けたときにもボディの個性を失わず、横から眺めても「シティ カブリオレ」と分かる独特のシルエットを生み出しています。
全長3,420mmという小さな車体の中に、4座の室内とオープンエアの楽しさを収めた、ホンダらしい発想のクルマでした。
風を浴びて、どこまでも。

屋根を開けると、同じ道でも見える景色が変わります。
海の匂い、街の灯り、夕暮れの空。窓越しではなく、そのまま流れ込んでくる景色こそ、シティ カブリオレが持つ一番の魅力です。
小さな車体だからこそ、道との距離も、風との距離も近い。速さとは別のところにある、オープンカーの楽しさを描いた情景ページです。
くるりとたたんで、空がひらく。

ソフトトップ先端の左右にあるロックを解除し、幌を持ち上げながら後方へ押していく。複雑な機械を使わず、手で開閉できるシンプルな構造でした。
たたんだ幌は車体後部へコンパクトに収納され、その上から専用のソフトトップカバーを装着します。カバーには、幌を汚れやごみから守り、走行風によるばたつきを抑える役割がありました。
閉じたときのリアウインドウには、傷がつきにくく後方視界にも優れたガラスを採用。開けた姿だけでなく、閉じた状態での実用性も考えられています。
小さなコクピット、ひらけた気分。

水平基調のダッシュボードに、丸い空調吹き出し口。運転席正面には、速度計と回転計を左右に置いたオレンジ表示のメーターが収まります。
画像の車内は、明るいチェック柄のファブリックシート仕様。シートと同じ生地はドアの内張りにも使われ、黒い樹脂部品の多い室内に軽やかな表情を加えています。
発売時には、ファブリックシートのほか、汚れに強いビニールレザーシートも用意されていました。オープンカーとしての使い方や好みに合わせて、内装を選べる仕組みです
かわいい後ろ姿と、ちゃんと使える荷室。

リアまわりは、角張ったテールゲートと黒い大型バンパーを組み合わせた、シンプルで愛らしいデザインです。
左右の灯火は、上側に橙色と赤色の縦型テールランプを配置。その下には、ボディ側へ一段小さく収められた独立形状のバックランプがあります。この二段構成が、シティ カブリオレの後ろ姿を見分ける大切な特徴です。
後部には独立したトランクルームも用意され、リッドは上方へ持ち上げて開きます。さらに後席を前へ倒せば、トランクと室内をつなげて長い荷物を積むこともできました
12色から選ぶ、シティの気分。

- フレイムレッド
- ジョイフルピンク
- サントスオレンジ
- ガルイエロー
- アスペングリーン
- エグモントグリーン
暖色系は、シティ カブリオレのポップで親しみやすい性格を強く見せます。一方、2種類のグリーンは、同じ車体でも落ち着きや都会的な印象を与えます。
青・黒・銀・白

- モナコブルー
- マルセイユブルー
- マイアミブルー
- ブラックバーンメタリック
- クォーツシルバーメタリック
- グリークホワイト
爽やかな3種類のブルー、引き締まったブラック、機械らしさを感じるシルバー、軽快なホワイト。同じシティ カブリオレでも、色によって性格まで違って見えるのが面白いところです。
小さな車体で、風を追いかける。

搭載されたER型エンジンは、排気量1,231ccの水冷直列4気筒OHC。5速MT車では最高出力67PSを発生しました。
絶対的な速さを求めたエンジンではありませんが、約800kgの軽い車体と組み合わせることで、街中でも郊外でも軽快な走りを楽しめます。5速MTを自分で操作しながら走れば、風とエンジンの音をより身近に感じられます。
メーターは、左にタコメーター、右に160km/hまでの速度計を配置。その中央に燃料計と水温計を縦に並べた、シンプルで読み取りやすい構成です。
シティ カブリオレ 5速MT車の主要諸元
| 項目 | 数値・仕様 |
|---|---|
| 型式 | E-FA |
| 全長 | 3,420mm |
| 全幅 | 1,625mm |
| 全高 | 1,470mm |
| ホイールベース | 2,220mm |
| 車両重量 | 800kg |
| 乗車定員 | 4名 |
| エンジン | ER型 1,231cc 直列4気筒OHC |
| 最高出力 | 67PS/5,500rpm |
| 変速機 | 5速マニュアル |
| 10モード燃費 | 16.4km/L |
| タイヤ | 175/60R13 76H |

昼の海辺だけが、オープンカーの舞台ではありません。
街灯や店の明かりが流れる夜の街。屋根を開けたシティ カブリオレなら、光や音、夜風までがドライブの景色になります。
行き先を決めず、気になった店の前で止まる。そんな気軽な夜の使い方も、この小さなオープンカーにはよく似合います。
1984–1986年、日本の空気。

シティ カブリオレが登場した1984年から1986年は、若者の服装、映画、食文化が急速にカラフルになっていった時代でした。
1985年12月には、人気漫画を実写化した映画『ビー・バップ・ハイスクール』が公開。ツッパリ高校生たちの青春と大胆なアクションが支持され、シリーズ化される大ヒットとなりました。
日本マクドナルドは1984年2月、チキンマックナゲットの全国販売を開始。手軽につまみ、ソースを付けて食べるスタイルが、日本のファーストフードに新しい楽しさを加えました。
同年3月11日には、宮﨑駿監督の映画『風の谷のナウシカ』が公開。その成功は、翌1985年のスタジオジブリ設立へとつながっていきます。
1984–1986年、イタリアの空気。

同じ頃のイタリアでは、海辺のバカンス、明るい若者ファッション、友人たちとの時間を描く青春映画が人気を集めていました。
『Sapore di mare』に続くバカンス映画の空気、若者が集まるハンバーガーチェーン「Burghy」、石畳とオープンカー。日本とは違う景色の中にも、自由でカラフルな1980年代の気分が流れています。
ページ下に描かれたアルファロメオ・スパイダーはシリーズ3。1983年から1989年に生産され、大きなバンパーや黒いリアスポイラーを備えた、当時のイタリアを代表するオープンモデルでした。
シティ カブリオレのボディ構造とソフトトップに協力したピニンファリーナも、こうしたイタリアのオープンカー文化を長く支えてきた存在です。
小さな自由は、今も色あせない。

コンパクトなボディに、4人で楽しめるオープン空間。
手でたためるソフトトップ、選べる12色のボディカラー、軽やかな1.2Lエンジン。シティ カブリオレには、難しい理屈よりも先に「乗ってみたい」と思わせる楽しさがあります。
街でも、海でも、昼でも、夜でも。屋根を開ければ、何気ない景色が少しだけ特別になる。
ホンダ シティ カブリオレは、小さくて、かわいくて、どこまでも自由な一台でした。

