スバル アルシオーネSVX CXW|遠くへ、美しく。時代を超えるグランドツアラー

1991年に登場したスバル アルシオーネSVXは、従来の国産クーペとは異なる発想から生まれたグランドツアラーです。
低く伸びやかなボディ、航空機を思わせる独特のサイドガラス、そして水平対向6気筒エンジン。速さだけを追い求めるのではなく、長距離を快適に、美しく移動するための一台として仕立てられていました。
今回紹介するのは、1991年式・型式CXWのバージョンE。スバルが描いた未来のクーペを、各部の特徴とともに振り返ります。

遠くへ、美しく走るためのクーペ
アルシオーネSVXを象徴する言葉が、「遠くへ、美しく」です。
低く構えたノーズからルーフ、リアスポイラーへと続くラインには、一般的なスポーツカーとは異なる落ち着きがあります。力強さを過度に主張せず、流れるような造形によって存在感を生み出しているのが特徴です。
大人が長距離を快適に移動するためのクーペという立ち位置は、当時の国産車の中でもひときわ個性的でした。

流れるような低いプロポーション
フロントまわりは、薄いヘッドライトと低く長いボンネットによって、ワイドで安定感のある表情にまとめられています。
横から眺めると、キャビンを包み込むように配置されたガラスと、なだらかに下がるルーフラインがよく分かります。窓の中にもう一枚の窓があるようなサイドガラスは、アルシオーネSVXを強く印象づける部分です。
リアには左右へ広がる一文字風のテールランプと大型スポイラーを採用。どの角度から見ても、低く、長く、広いスタイリングが保たれています。

包み込まれるような室内空間
室内は右ハンドル仕様で、運転席を中心にメーターや操作系がまとめられています。
直線的なダッシュボードと縦型のセンタークラスターは、1990年代初頭らしい未来的なデザインです。華美な装飾を抑えながらも、上質なグランドツアラーらしい落ち着きを感じさせます。
メーターは大型の速度計と回転計を中心にしたアナログ式。視認性を重視したシンプルな構成で、ATセレクターも自然に操作できる位置へ配置されています。

3.3リッター水平対向6気筒エンジン
アルシオーネSVXの心臓部には、3.3リッターの水平対向6気筒DOHC24バルブエンジンが搭載されています。
低重心につながる水平対向レイアウトに加え、6気筒ならではの滑らかな回転感が魅力です。刺激的な加速だけではなく、静かで余裕のある走りを重視した性格に仕上げられていました。
長距離を穏やかに走り続けられることこそ、アルシオーネSVXが目指した速さでした。

アルシオーネSVXを形づくる3つの個性
アルシオーネSVXの大きな特徴が、窓の中に独立した開閉部分を設けた独特のサイドガラスです。キャビン全体をガラスで包むような造形を保ちながら、実用性も確保しています。
横から見た姿は、フロントからリアまで一本の線で結ばれたように滑らかです。ドアやフェンダーの境目も目立ちにくく、車体全体が一つの塊としてデザインされています。
リアでは、左右へ大きく広がるテールランプと専用スポイラーがワイド感を強調。後ろ姿にも、アルシオーネSVXならではの先進性が表れています。

1991年の日本とともに生まれた一台
1991年の日本には、バブル景気の余韻が残り、高級車や高性能車、個性的なスペシャルティカーが数多く登場していました。
街には高層ビルや華やかな商業施設が増え、音楽はカセットからCDへと移り変わる時期。携帯電話やポケットベル、携帯型ゲーム機など、新しい機器も次々と身近な存在になっていきました。
アルシオーネSVXの上質で未来的な雰囲気は、そんな時代の空気によく似合っています。

アメリカの広い道が似合うグランドツアラー
広大な高速道路や砂漠を貫く一本道など、長距離移動が日常となるアメリカは、アルシオーネSVXの性格に合った舞台でした。
ゆとりあるエンジンと安定した走り、長時間乗っても疲れにくい室内。ダイナーや都市を巡りながら走り続けるグランドツーリングの世界観に、自然と溶け込みます。
1991年当時はカセットとCDが共存し、車内で好きな音楽を聴きながらロングドライブを楽しむ文化も広がっていました。
まとめ
1991年式スバル アルシオーネSVXは、速さを誇示するだけのスポーツクーペではありません。
独創的なガラスエリア、流麗なボディ、水平対向6気筒エンジン、そして長距離移動を重視した快適性。そのすべてが「遠くへ、美しく」という思想のもとにまとめられています。
登場から年月を重ねた現在でも、その姿は古さよりも個性を強く感じさせます。アルシオーネSVXは、スバルが本気で描いた未来のグランドツアラーとして、今なお忘れがたい一台です。

